敏腕専務はウブな彼女を染め上げたい~イジワルな彼の甘い言いつけ~

「森次さん、ですね。僕は食堂運営を担当しています、総務の烏丸(からすま)です」

「よろしくお願いいたします」


名刺を交換して挨拶を交わし、テーブル席に促されて腰を下ろす。眼鏡のことは今はどうでもいいから、集中しなければ。

それから烏丸さんが淹れてくれたコーヒーをお供に、和やかに打ち合わせが始まった。

今日の用件は、社食のメニューの値上げ交渉だ。食材費の高騰が原因で、これまでの価格のまま提供するのが厳しくなってきたためである。

施設によって違いがあるが、TOBARIではパーフェクト・マネジメントがメニューの価格も決めているので、変更したいときはその都度話し合う必要がある。

ここはメインや小鉢の料理をそれぞれ選ぶことができ、サラダバーなどもあるレストランさながらの食堂で、その分結構な費用がかかるのだ。

私がまとめた資料を提示しながら、専務が丁寧に説明していく。


「メニューの価格は上がっても、ご飯の無料サービスは続けていく方向で考えております。社員の皆様には今よりもご負担をおかけしてしまうことになって心苦しいのですが、ご検討いただけますか?」


だいたいのことを話し終わり、烏丸さんの反応を窺う。