社長の用事は仕事の件だった。今日専務と一緒にとある社員食堂へ赴く予定だった営業部の先輩が、体調を崩して休むことになったので、代わりに私が同行してくれないか、とのこと。
私が普段しているのは、営業部ではあっても主に事務作業で、外回りに出かけることはほとんどない。
しかし、パーフェクト・マネジメントでは皆がオールマイティに仕事をこなす。営業部の仕事を他の部署の人がやることもあるし、その逆もある。
人手が足りなかったり手が回らないとき、できる人がやってカバーし合うのはどこでも同じかもしれない。
ただ、誰かひとりに負担をかけることなく、社員からの不満もまったく発生せずそうできているのは、なにげにすごいことだと思う。
今日は、特に業務が立て込んでいない私にその役目が回ってきたので、快く引き受けた。桐原専務と一緒なら、さらに安心だ。
約束の午後二時に社用車で向かったのは、郊外にある大手精密機器メーカー〝TOBARI〟の本社。八百名近くの従業員が働く十階建てのビルで、社員食堂は九階に入っている。
エントランスに入って受付を済ませると、右手にあるミーティングスペースに案内された。



