敏腕専務はウブな彼女を染め上げたい~イジワルな彼の甘い言いつけ~

口元がだらしなく緩みそうになるのを堪えていた、そのときだ。


「なんだ、残念」


専務の背後からやってきた人物が茶化した口調で言い、彼の肩にポンッと手を乗せる。


「俺もちょっと期待してたんだけどな。少女漫画のヒーロー的なイクミンが見られるのを」

「……おはようございます、社長」


現れたのは、いつの間にか話を聞いていたらしい不破社長。面白がっているのが明らかな彼に、専務は目を据わらせ、うんざりした様子で挨拶をした。

社長に賛同されたエイミーは、コロッと表情が明るくなる。


「ボスも思いますよねぇ? ふたりが本物の恋人になったらいいのに、って」

「ああ。それで早く俺を安心させてくれよ」

「あなたは私のなんなんですか……」


私自身もネタにされているにもかかわらず、専務が即座にツッコむので、息の合ったかけ合いにエイミーと一緒になって笑ってしまった。

それもつかの間、社長は私たちにこんなことを言って社長室へと歩きだす。


「だからってわけじゃないが、ふたりに用件を頼みたいから来てくれるか」


一体なんだろうかとキョトンとして、私と専務は目を見合わせた。