敏腕専務はウブな彼女を染め上げたい~イジワルな彼の甘い言いつけ~

「思いのほかふたりとも普通」


ボソッと呟く彼女に、専務も涼しげな瞳を向けて問いかける。


「なにを期待していたんです?」

「そりゃあ……食事のあとイイ感じになっちゃったのを思い出して、もじもじしながらぽっと頬を赤らめて〝うふっ〟てなるカノちゃんとか、それを愛おしそうに見つめて頭なでなでするイクミンとか」

「少女漫画の見すぎじゃないですか」


斜め上に目線をさ迷わせてニヤけているエイミーの妄想を、専務がキレのあるひとことで一刀両断した。

私は複雑な気分で苦笑いする。エイミーみたいに妄想するのもわからなくないし、実際心の中では私も似たような状態になっているから。

専務は若干呆れ顔で腕を組み、口をタコのようにしている彼女に言う。


「たとえ〝イイ感じ〟になったとしても、他人の前であからさまな態度は取りませんよ。するとすれば、それは……ふたりきりのときに」


言葉の最後に、ちらりと流し目を向けられ、ドキッと胸が鳴った。

眼鏡プラス流し目、いただきました! 専務がやると、妖しげな色気があってたまらない……。

ふたりのときにだけ甘くなるスタンスにもときめいてしまう。恋人のフリとはいえ、私も頭なでなでを体験した身だし……。