敏腕専務はウブな彼女を染め上げたい~イジワルな彼の甘い言いつけ~

専務の演技は、演技と思えないほど完璧で甘かったんだよ、エイミー。夢みたいなひとときを過ごしたから、今日会うのが緊張する。

前まではただ、〝眼鏡が最高に似合っていて、仕事もデキるカッコいい上司〟として注目していただけの彼を、今日からは全然違った意識で見てしまうだろう。


「あ、噂をすれば」


エイミーの声に反応して彼女と同じほうをぱっと見やると、出勤してきたスーツ姿の専務が目に入ってドキッとした。

ああ、今日は一段と輝いて見えるのはなぜ……。

私たちはたまたま専務のデスクの近くにいたので、こちらに歩み寄ってくる。それに比例して鼓動のスピードも速くなるものの、表面上は平静さを保つ。

彼とふたりきりだと、いろいろとキャパオーバーになってあからさまに動揺してしまうのだけど、普段から眼鏡フェチを隠しているせいもあってか、基本は顔に出さないようにできる。

そばにやってきた彼が、いつもとなんら変わらない笑みを携えて私たちに挨拶をする。


「おはようございます」

「おはようございます。金曜日はありがとうございました」

「いえ、こちらこそ」


私も改めて頭を下げ、型通りのやり取りをしていると、それを観察していたエイミーが、なぜか不服そうに口を尖らせるのに気づいた。