あまり穏やかではない内容に、朝から嫌な気分になる。このあたりは比較的治安がよく、不審者が出た話は少なくとも私が引っ越してきてからは一度も聞いたことがなかったのに。

なんだか不気味だから、仕事が終わったら寄り道しないで早く帰ろう。……まあ、アフターファイブに予定があるのは稀なのだけど。

私生活も地味な自分に軽くヘコみつつ、眉をひそめて話し続けるマダムの横を通りすぎ、職場へと向かった。


パーフェクト・マネジメントのオフィスは、新宿にそびえ立つ複合オフィスビルの十四階にある。

ワンフロアを借り切っているそこに入ると、すでに出勤していたエイミーが私に気づいて駆け寄ってきた。


「カノちゃんカノちゃん! お母さんとの食事会はどうだった?」


興味津々な様子で問いかける彼女は、纏わりついてくる子犬みたいで、私はクスクスと笑って答える。


「専務のおかげでうまくいったよ。しばらくは大丈夫そう」

「わぁ~よかった! イクミンがどんな感じで演技してたのか見たかったなぁ」


ルンルンとした彼女の言葉で、金曜日の出来事があれこれと蘇ってくる。