今の発言に別に深い意味はないとわかっているのに、いちいち反応してしまう自分が恨めしい。

だって、専務がこんなに〝男〟を感じさせるのは今日が初めてだから……。

恥ずかしくて縮こまる私をよそに、彼はあっさりと普段通りの穏やかな口調に戻る。


「私も入ってくるので、お気になさらず寝ていてください。こちらのベッドを使ってくださいね」


寝室のほうに向かうのを見てはっとした私は、パタパタとスリッパの音を立ててあとを追う。


「専務、私はソファでも床でも十分ですから……!」

「私が女性にそんな扱いをさせるとお思いですか?」


寝室らしきドアの前で止まり、くるりとこちらを振り向いた彼の眼鏡がきらりと光る。奥の瞳はどこか厳しくて、思わず口をつぐんだ。

そう言われてしまうと否定するしかない。小さく首を横に振る私に、彼はふっと表情を緩めてドアを開けた。

寝室も落ち着いたモダンな雰囲気で、とても綺麗にされているのがひと目でわかる。


「明日はお互い休みですから、時間は気にせずごゆっくりどうぞ」

「……はい」


中に入って素直に頷けば、彼は優しい笑みを浮かべて私の頭にそっと手を乗せた。