内心そんなふうに思うも、彼は腹黒さなど微塵も感じさせない、愛しそうな笑みを浮かべて私を見つめる。


「あなたが慌てているところとか、花が咲いたみたいに笑っている顔を見るだけで嬉しくなる。俺にとってのフェチは花乃なんだ、きっと」


素の生巳さんから口にされた言葉は、茶化されているようでいてストンと胸に落ちる。

私も同じ。彼がそばにいて、髪を撫でて、『可愛い』と言ってくれて。平凡な日常を共有しているだけで、こんなにも幸せなのだから。


「私のフェチも、生巳さんだったんだな……」


他人が聞いたらバカにされそうなことを言い合い、私たちはお気楽な調子で笑った。そして、紳士的な専務と地味なOLに戻るまでの少しの間、手を繋いで歩きだす。


どうしてかうまく説明できないけれど、最初からとにかく気になった。

そんな感情を抱くことから始まる恋愛もあっていいはずだし、そういう相手に出会えるのは運命的だとすら思う。

だからこれからも、遠慮なく見つめさせていただきます。大好きな、あなたを。


 ★○o。End。o○★