「花乃を意識しだしたのは、真面目で物静かなあなたを構いたくなったのが最初のきっかけだ。拒まれれば手懐けたくなるし、自分のものにして、目一杯可愛がりたくなった」


私の頬にそっと触れながら言う生巳さんの瞳は、熱情が色濃くなっているのがわかる。

意地悪するのが好きな割には、優しさや愛情もちゃんと感じられる。だから私も、まったく嫌悪感を抱かないのだろう。

彼は、表情に真剣さを交じらせて「だけど」と続ける。


「それは誰でもいいわけじゃない。花乃だから、ここまで欲が湧いてくるんだよ」

「そう。そうなんです。私も、生巳さんだからおかしくなっちゃうんです」


深く同意してつい息巻くと、彼はまたおかしそうに笑った。


「つまり、お互いを好きなことに変わりはないってことだ。そこから始まる恋愛もアリじゃないか」


前向きな言葉をもらえて、私の気持ちも口元も緩む。本当の自分も受け入れてもらえてよかったと心からホッとしながら、「そうですね」と返した。