「……私も、愛して、います」


震える声でたどたどしく返された言葉には、心の奥にじんわりと染み渡る温かさがあって。とても出まかせとは思えなかった。

わずかに優しい笑みをこぼしたあと、唖然としたままの美香に向き直る。


「あなたを騙したことについては悪かったと思っています。申し訳ありませんでした」


真摯に一礼すると、俺が謝るとは思っていなかったのか、彼女は目を見張る。


「ですが、見ての通り俺たちは愛し合っている。今後もまだつきまとうようなら、然るべき措置を取ります。もちろん、あなたがした行いのすべてをお父様に報告したうえで。いいですね?」


厳しい口調で放つと、彼女は脱力し、諦めの色を滲ませた。次いで、これまでに見たことのない、覇気のない表情で呟く。


「ろくでもない人間ね、お互いに」


その言葉は、皮肉を交えながらも、彼女自身も多少は反省しているように思えた。

そして、「……さようなら」と掠れた声を残し、俺たちから顔を背けて車に乗り込む。きっと、これで彼女の報復も終わるだろう。