「なんですって?」

「偽恋人を演じていただけで、彼には他に大切な人がいるんです。私も、彼の特別にはなれなかった……。美香さんと同じです」


アスファルトに視線を落として力無く打ち明けたあと、顔を上げてひとつ息を吸い込む。


「美香さんを苦しめたこと、申し訳なかったと思っています。本当にごめんなさい」


呆気に取られている様子の彼女に謝り、頭を下げた。

美香さんが、もし生巳さんを本気で愛しているのなら、私たちがついた嘘で傷つけたのは間違いない。失恋がとても辛いことだと身をもって知った今、ひしひしと罪悪感を抱いている。

だからといって、なんでもやっていいわけではないのは当然だ。


「でも私は、生巳さんや彼の大切な人を貶めるような嫌がらせは絶対にしません。好きな人には、幸せになってほしいから。誰かを恨むと、きっとさらに自分が辛くなります」


無意識に手をぎゅっと握りしめ、美香さんをまっすぐ見つめて伝えた。前向きに進んでほしいと願いながら。