敏腕専務はウブな彼女を染め上げたい~イジワルな彼の甘い言いつけ~

こちらを振り向いた彼にアイコンタクトを取ると、私がなにか話したいのだと察してこちらに向かってきた。

今夜は同級会がある。会場はここから近いらしいので、『仕事終わりにそのまま向かってください』と言ったのだが、彼は私を気にかけてためらっていた。

でも、もう過保護にしてもらう必要はないことを伝えておきたい。

今度はふたりでミーティングルームに入り、生巳さんが口を開く。


「どうしました?」

「さっき、私のアパートの近くにいた不審者が捕まったっていうニュースを見たんです。もうひとりで帰れますから、私のことは気にせず同級会楽しんできてください」


今日だけでなく、これから先もひとりで大丈夫だという気持ちを込めて言い、口角を上げた。

勘のいい彼は、それを感じ取ったのだろう。怪訝そうな面持ちに変わる。


「まさか、アパートに帰ろうとしているわけではありませんよね?」

「はい……今日のところは」


私のひとことで、彼の表情が強張った。

私も寂しさや名残惜しさが表に出ないよう、いつも通りを心がけ、なんとか笑顔を作る。


「荷物をまとめ次第、出ていきます。私を置いてくださって、本当にありがとうございました」