敏腕専務はウブな彼女を染め上げたい~イジワルな彼の甘い言いつけ~

有咲さんは「そうだったんだ~!」と目を輝かせ、エイミーは得意げにニヤニヤしている。こういうことには本当に敏感なんだから……。

しかし、彼女も私と似た経験があるらしい。


「あたしも、地下アイドル時代は変な男の人が待ってたりしたから、対処法はいろいろ知ってるよ。偽恋人ってのも、不審者対策に役立つよね」

「なるほど。偽りでも守ってくれる桐原さん、さすが」


感心する有咲さんに、私も同意して微笑む。

生巳さんの気持ちがどうであれ、おかげで私は二度も危機から逃れられた。一度目はお見合い話、二度目は不審者から。

それに加えて、恋する喜びまで味わわせてもらえたのだ。彼には感謝しかない。


「ていうか、エイミーもそんな目に遭ってたの?」

「これでも一応ファンがいたからね~」


有咲さんとエイミーの地下アイドル時代の話を聞いて笑いながら、私はどこか吹っ切れるものを感じていた。


午後の業務が始まり、私はひとりミーティングルームで営業部の打ち合わせの準備をしていた。

それを終えてフロアに出ようとドアを開けた瞬間、偶然生巳さんが通りかかったので、私は意を決して「専務」と呼びかける。