敏腕専務はウブな彼女を染め上げたい~イジワルな彼の甘い言いつけ~


気を落ち着かせて席に戻ったあとは、なんとか平然とやり過ごした。表に出さない性格は、こういうときは役に立つ。

慧子さんとのことは知りたいけれど知りたくない、矛盾した気持ちが入り交じり、生巳さんにはっきり聞くことができない。それどころか、なんだか気まずくて態度もぎこちなくなっている。

もし慧子さんが特別な人だとしたら、どうして私を家に置いておくのだろう。

どうして、本物の恋人みたいにデートして、キスをしたの──。


そんなことばかり考えているせいで、目を合わせることすらままならないし、また可愛げのない自分に戻っていた。

金曜日の今日も、浮かない気分で仕事をこなし、今はエイミーと有咲さんとでランチをしているところ。本社近くにあるこの定食屋はサラリーマンに人気で、女性の姿は私たち三人だけ。

お気に入りのから揚げ定食を食べ、三人でたわいもない笑い話をして、少しでも気分を上げようとしていたときだった。


「あ、捕まったんだ」


上のほうに設置されたテレビを見上げ、有咲さんがひとこと呟いた。私もそちらに目をやると、お昼のニュースが流れている。