二人のあいだには、雑談も増えた。

 それが結局のところ言葉の勉強になり、対話力トレーニングにもなると気づき、疎かにするわけにもいかなかったのだ。

「好きなもの、10個。なんでもいいから言ってみろ」
「ねんど」
「他には?」
「ヨイチのごはん」
「……具体的に。ごはんはごはんでも、色々作ってきただろ」
「ぜんぶ!」
「それじゃまた作ってやるときの参考にならんだろうが」
「キュウリかな」
「言っておくがあのキュウリは僕が育てたわけではないからな。切ってマヨネーズであえただけだ」

 手間隙かけて作った料理よりも先にキュウリをあげられて軽くへこんでいたら、

「ぐらたん!」

 次にそこそこ時間をかけて焼き上げるものを言われ救われた気持ちになる。

「たしかにお前好きそうだったな。マカロニグラタン。……しかし好き嫌いせずになんでも食うよな」
「ヨイチ」
「は?」
「センセイ」

 【好きなもの】に人間も含めて考えているということに気づく、与一。

「……そうだな。先生には感謝しろよ」
「おふろ」
「風呂か。僕は苦手だ。できればシャワーで済ませたい。どんなところが好きなんだ?」
「どんなところ?」
「好きなら、理由があるんじゃないか」
「お風呂は、きもちいい。ねんどは、たのしい。ヨイチも、たのしい」