与一は、キーボードにこう打った。


【ーーこれらの状態から、彼女を『被虐待児』と判断。本人の許可のうえ撮影した写真を、ここに添付する。】


「【知り合いの子】ってのはウソですか?」
「いいえ。幾らか知っている女の子ですから【知り合いの子】で間違いありません」
「印象操作しましたね」
「なぜそうする必要が?」
「あずかっているのではなく、さらってきたからです。先生は、よかれと思い紅花を連れてきた。保護者は――いいえ、【誰も】紅花がここにいることを知らない。そんなことは……。世間一般では許される行為ではない」
「怒りましたか?」
「……いえ。なにかしらワケありだとは思ってきたので、ある意味裏切られてはいません」

 与一が、表情を曇らせる。
 しかし男は穏やかに微笑んだ。

「半分正解です」

 ーー半分

 与一は男の言葉が引っ掛かったが、その意味を聞くことはできなかった。

「私が正攻法などあっさり棄ててしまうことくらい。あなたはよく知っているでしょう?」