与一は、気になっていたことを問うことにした。

「ひょっとして、繭は。親に捨てられた子なんですか」
「半分正解です」
「それって……」
「あの子は、少々特殊でして」

 普通とは、なにかが、違う。

 そんな違和はあった。

「あの子の親は、あの子を捨てたと思っていたかもしれないですし。あの子はあの子で親を棄ててやったと思っている」
「イノシシの解体。できるんですよね」
「……まあ。イノシシくらい、やってのけるでしょうね」
「あんな小さな身体で、驚きです。サバイバル生活でも生存しそうというか。僕みたいな都会育ちの人間と持久力も戦闘力も格が違うなと」
「見たんですか」
「え?」
「解体するところ」
「……いえ。さすがに。僕には」
「地下室に入りましたか」

 ーー地下室?

「いえ。そんな部屋がどこかに?」
「けっして近づかぬように」
「……はい」
「そうですよね。君には魚のおろし方を教えたときでさえ、すごく抵抗あったくらいですから。哺乳類はさばけませんよね」
「小さな鳥もできる気がしません」
「そうです。与一くんは、そういう子なんです」