…ふ… 「ふく…しゅう…?」 日常生活では聞き慣れない単語。 「そ。フクシュー」 ハヅキが棒読み口調で繰り返す。 「幼い頃の傷って意外と深いんだよなー。 あの頃、散々さぁちゃんにからかわれて、泣かされて。だから借りは返しとこうかなって」 「借り…?」 「そ」 冷たい北風が吹く。 風にサラサラとハヅキの黒髪がなびく。 それがあまりに美しくて、儚げで。 不覚にも一瞬――見とれてしまった。 「今度は俺がさぁちゃんを、うんと泣かせてあげる」