耳を疑った。目も疑った。 なんで。 なんで今更、こんな所で? 「ほら、ここー!このカフェアート超かわいくない?」 「いいけど俺次の土日は試合だから会えねーよ?」 「あっ!そっかー!」 笑いながら、スポーツバックをななめがけした男と腕を組んで歩いている女―― 絶対間違えない。 この俺が。 “さぁちゃん” 「渓渡…好きっ!」 へらっと笑ったさぁちゃんは、男に身をすりよせて。 俺になんて1ミリも視線をよこさないまま。俺のすぐ隣をすり抜けていった。