ワケあり男子

「今日、いつもより人が多くない?」



「だな」



人に押されて少し前のめりになっていることで、律くんとの距離が更に近くなる。



わぁっ…。



この距離感…ちょっと耐えられないかも。



足と足が触れる度にドキドキして、視線を送られるともう俯くしかなくて…。



ひゃっ。



律くんが前髪に触れた。



「今日は、前髪上げてない」



えっ?



あー…そうなの、たまにあげてる時があって…って。



「どうして知ってるの!?」



「どうしてって…」



苦笑するだけで、答えてくれない。



私の存在を前から知っていたってこと?



えー…と。