ワケあり男子

「そうなの。苦手だよ…」



「スイーツ食べ放題だから、ソファで喋ってようよ。ねっ」



その方がいいかなあ。



コクコクと頷くと、河村さんはカバンをソファの上に置いて利用者カードを機械に通しに行った。



そしてそのままトイレに行くと言い、行ってしまった。


ソファに座ろうとすると、如月さんに声をかけられる。



「乃愛ちゃんにお願いがあるんだ」



「なんですか?」



「3番の部屋に、これを持って行って欲しい」



カゴの中に入ったマイク2本。



「私がですか!?」



「律たち、持って行くの忘れたんだ。お願いできるかな」



如月さんの爽やかな笑顔には不思議な力がある気がする。



マリモくんにまた会うのは怖いけど、そのお願いを断ることなんて私にはできない。



「わかりました」