世界No.1の総長と一輪の花Ⅲ





…嫌な予感しかしない。



「そんなに大事な人の物なら、全部見つけてね」



そう言って、女性は手に握っていたものをベランダの向こう側へと投げた。




ひらりと落ちていくネクタイに、ぱらぱらと落ちていくボタン。







私は慌てて手を伸ばした。
ベランダの手すりから身を乗り出して……



ネクタイに手が届いたところで、ふわっと足が宙に浮き───






「え?」




戻ろうとしても戻れなくて、体はどんどんベランダの向こう側へと落ちていく……。




「花莉!!!!!!!」




京子の声が耳に届くけど、もう……私の視界には地面しかうつらない。






今、ここで手すりを掴む手を離したら…
私は地面に真っ逆さまに落ちていく。




…人間って、2階から落ちたら死ぬのかな
2階ってまだそこまで高さないよね、でも打ちどころ悪かったら……





もうどうにもできなくて、ぎゅうっと強く目を瞑った。