…嫌な予感しかしない。
「そんなに大事な人の物なら、全部見つけてね」
そう言って、女性は手に握っていたものをベランダの向こう側へと投げた。
ひらりと落ちていくネクタイに、ぱらぱらと落ちていくボタン。
私は慌てて手を伸ばした。
ベランダの手すりから身を乗り出して……
ネクタイに手が届いたところで、ふわっと足が宙に浮き───
「え?」
戻ろうとしても戻れなくて、体はどんどんベランダの向こう側へと落ちていく……。
「花莉!!!!!!!」
京子の声が耳に届くけど、もう……私の視界には地面しかうつらない。
今、ここで手すりを掴む手を離したら…
私は地面に真っ逆さまに落ちていく。
…人間って、2階から落ちたら死ぬのかな
2階ってまだそこまで高さないよね、でも打ちどころ悪かったら……
もうどうにもできなくて、ぎゅうっと強く目を瞑った。



