私はすぐにその人の元へと走った。




…夢だったらいやだ。
幻覚だったらいやだ。




「花莉…!!!!!」




彼は私の名前を呼んで、バイクからおりると手を広げる。

その腕の中に飛び込むように強く抱きついた。




…触れる。
ちゃんと、体温もある。




夢じゃ…ないよね……




視界が歪んでいって、涙が溢れた。




「…詩優……っ、詩優っ、詩優…」




何度も詩優の名前を呼ぶ。




…よかった。
目覚めて本当によかった…。




「花莉…、無事でよかった」




上から降ってくる声。
彼も強く抱き締め返してくれると、心に安心感が広がって…。




涙がとめどなく溢れてくる。




「詩優こそ…っ無事で、よかった……」




嗚咽のせいで上手く話せない。
でも、詩優はちゃんとわかってくれて頭を撫でてくれる。





温かい、大きな手で。