胸が張り裂けそうなくらい痛い。
……見たくない。
でも、体が凍りついたように動かなくて…。
私は大好きな彼がキスをしているところを見ていることしかできなかった。
リップ音が聞こえてきて、怒りと嫉妬でどうにかなってしまいそう。
「…やだよ……詩優…っ…」
嗚咽混じりに出た小さな声。
そんな声は彼には聞こえるはずもないのに、画面越しにいる詩優は関根さんを突き放して。
動かなくなる。
『…しょうがないなぁ。夜瀬くんは』
関根さんはそう呟いて、スマホを手に取ると何かを操作。
そして─────────ガチャっ、と部屋のドアが開く音が聞こえた。
ドアが開いた音は画面越しから聞こえたわけではなく……私と冬樹くんが現在いるこの部屋から。
床に倒れながらドアの方へと顔を向けると、そこにいた人物は
───────妃芽乃 俊。
私の義兄だった人。



