「こっから出たほうが早いな」
詩優は一旦私の手を離すと窓を開けて、そこから外へと出た。
それから彼は手を差し出して、「花莉」と私を呼ぶ。
本当はここから出るのはよくないし、先生に見つかったら絶対に怒られる。
だけど……今は緊急事態。
ごめんなさい、と心の中で謝ってから私は詩優の手を掴んで窓から外へと出た。
それに続いてみんなも外へと出ると靴を履いて。裏門から数メートル離れたところで立ち止まる。
今のうちに息を整えて、ちらりと詩優の後ろから裏門を見るけど暴走族らしき人はいないみたい。
叫び声は確実に近くなってきているけど…。
「車は康が危険になるから呼べねぇし、このまま走るぞ」
「ここから1番近いのは俺の家だ。そこを避難所にするといい」
竜二さんがそう言うと、詩優は「さんきゅ」と返して私の手を強く引いたまま裏門を出る。
息を整える時間もあまりない。
立ち止まってる時間はないんだ。



