「やりたいことがなくて……。やっぱり就職かな、って」




ちらりとお母さんを見れば、




「就職でもいいけど、どんな仕事をしたいかとか考えてるの?」




と聞かれた。
…耳が痛い。そこまでのことは考えていなかったから。




高校3年生にもなって、私は進路についてよく考えていなさすぎる。
もっと、前からちゃんと考えておくべきだった。




「…それは…まだ、考えてなくて」




何か言われるんじゃないかと思って、お母さんから目を逸らす私。

でも、何か言われるとか怒られるとかではなく、返ってきた言葉は




「ゆっくり考えて、とは言えないけどよく考えなさいね」




という優しい声。
私はその言葉にこくんと頷いた。




「あ、そうだ!花莉にさっきの写真渡しておくわね」




お母さんは思い出したように立ち上がり、本棚からクリアファイルを取ってそれを私に手渡す。
渡されたのクリアファイルの中には、さっき見せてもらった詩優と私の幼稚園の頃の写真。