京子side




「りゅ、竜二」




2時間目の授業が始まる直前に、私は隣の席の竜二に声をかけた。
すると、すぐにこっちを向いてくれて。




私は勇気を振り絞って




「数学の教科書忘れちゃって……一緒に見せてもらってもいい?」




と聞いてみた。




次の授業は数学。
本当は、数学の教科書は持ってきている。だけど、嘘をついたのは……




竜二との距離を少しでも縮めたかったから。




緊張しながら竜二の返事を待ったら、すぐに




「あぁ」




と返ってきた返事。
それから竜二は机を動かしてきて、私も慌てて自分の机を動かして、ピタリとくっつけた。





一気に近くなった竜二。
なんだかいい匂いまでする。





…心臓が暴れ出す。




「あ、ありがとうね、竜二」




ちらりと隣にいる竜二を見ると、近くなった距離で交わる視線。
心臓が跳ね上がって、聞こえてしまわないか心配になった。




「あぁ。それにしても京子が忘れ物なんて珍しいな」


「き、今日は……朝からぼうっとしてたから荷物の確認忘れて学校来ちゃって……」