『私も行く』
こんなことを言ったら詩優を困らせてしまうだけ。それはわかってる。
もう詩優と喧嘩はしたくないから、わがままも言わないし、困らせない、そう決めた。
そう決めたのに……
詩優が心配で、つい裾を掴んでしまった。
「花莉はしばらく京子の家に泊めてもらって」
何も言えないでいたら、上から降ってきた声。
詩優が私の安全のためを思って言ってくれたこと。
それはすぐにわかったけど……
急に言われるのは寂しい。
掴んでいた袖を離して、下を向くと
「いい子にしてろよ?」
ぽんぽんと大きな手が頭を撫でてくれて。
彼はすぐに行ってしまった。



