「…女、情報通りここにいたか」
落ちている刃物を手にとったところで聞こえてきた男の声。
私はピタリと足を止めて声のしたほうへと目を向けた。すると、フードを被った男は私へと目を向けて、こっちを見ている。
薄暗くてよくは見えないけど……知らない人。この声も聞いたことがない。
話の内容的に、狙われていたのは詩優ではなく……私、だろうか。
「花莉、康に連絡頼んだ」
詩優はフードを被った人の顔を押さえつけて、そう言う。
私はこくんと頷いて。刃物を手に持ったままベッドの脇へと戻って康さんに電話をかけた。
康さんはすぐに電話に出てくれて、現状を説明。
すぐに来てくれることになって、電話を切ったら聞こえてきたのは…───────。
「宮園慶一と槇村海斗って男にその女の顔写真見せられて、殺せって依頼がきたんだ…っ」
と言った男の声。
もう二度と聞くことはないと思っていたその名前。
私はうずくまって震えていることしかできなかった。



