「数年前に玲央と私の…両親が他界して、人間の汚いところをたくさん見てきました。そこでいろいろあって、人をなかなか信用できなくなってしまいましたが……
玲央は今、自分から詩優先輩のことを信じて、一緒にいたいと思っているんです」
私たちの目を見て、必死にそう言う空木さん。
それから頭を下げて。
「玲央はいつも1番に私のことを考えてくれたので、今度は私が玲央に恩返しをしたいんです。なので…私は玲央と距離を置きます。
だから、玲央に居場所を…仲間をつくってあげてください。
お願いします…」
空木さんは小刻みに震えていた。
…私たちのさっきの話を聞いていたのだろうか。倫也が妹と距離を置いている、という話を…。
空木さんが空木と離れるなんて。
そんなのだめだよ。空木にとって空木さんは1番大切、以前そう言っていた。
だから2人は一緒にいるべきなのに。
空木は……空木はちゃんと考えて今行動しているのだろうか。
そう思うと立ち止まってなんていられなくなって。
私は階段を駆け上がる。



