このまま喧嘩をしたところで詩優が負けるとは思えない。本当に、空木が危ないかもしれない。
空木が胸ぐらを掴まれているその隣では、久我はただその様子をめんどくさそうな表情で見ているだけ。
止める気配はない。
わ、私が止めるしか…!!!!!
「詩優もう行こうっ」
私は詩優と空木の間に入って、胸ぐらを掴む詩優の手を掴んだ。
詩優を押して空木から引き剥がそうとするが、空木は
「ちっこい雷龍ちゃんのおっぱいのサイズは~」
なんて言ってさらに詩優を怒らせる。
…なんで、言おうとするの。
痴漢男だけど…少しだけ、ほんの少しだけ、いい人かもって思ったのに……
私は思いっきり足を上げて空木のとある場所を狙った。
すると、見事にそこに当たって……。
「っ!!!!!!!!」
空木は顔を歪めて、後ろによろめく。
私が狙ったのは…───────空木の脛。
脛は当たったら痛いところ。
できる限り思いっきり蹴ったから、空木にも効いただろう。



