思い出すのはあの雨の日の出来事。
…私はわがままを言って彼を困らせてしまったんだ。不安にさせてしまった。私のあの行動が……。
それなのに私は自分のことしか考えられなくて、酷い言葉で詩優を傷つけて。
「…私も本当にごめんね」
そう謝ると詩優から手渡されたもの。
置いてあった茶色の紙袋だ。
「前のマグカップはどうしてもなおせなくてさ……。新しいのになってごめんなんだけど、どうしても花莉に渡したくて持ってきた」
…まさか、まさか。
期待が膨らむ。
「あ、開けてもいい…?」
隣にいる詩優にそう聞くと、「おう」と返事をした。
紙袋の中を覗いてみると、クッションシートで丁寧に梱包されたものがひとつ入っている。
取り出してみると、それはちょうどマグカップくらいのサイズで…。
クッションシートをとって中を見ると、包まれていたものは…
白猫のマグカップ。