…逃げてばかりだ。
「竜二、頼みがあるんだけどさ」
電話が繋がったのか話し出す詩優。
「緊急の用事があってさ、久我渉捕らえて体育館裏に連れてきてくんね?」
詩優の通話相手は竜二さん。
ほんとに数秒で通話は終わり、「さんきゅ」と詩優が最後に言って電話を切った。
…ちゃんと説明して、謝らないと。
わがまま言ったことも、嘘ついたことも…。
もう一度ゆっくり前を向くと、またすぐに詩優と目が合った。
本当は逸らしてしまいたい。
けど、ちゃんと謝らなくちゃ…
ぎゅっと拳に強く握って、大きく息を吸った。
その時、
「…ごめん」
先に聞こえてきたのは詩優の声。
そう言った詩優はなんだか悲しそうな表情をしていた。
私は慌てて口を開く。
けれど、今度はタイミング悪く鳴り響く着信音に制された。
詩優のスマホの音。
電話だろう。
「ごめん」
彼はもう一度謝って、スマホを操作。
耳にスマホを当てて通話をしだした彼は……何があったのか、一気に不機嫌そうな表情に変わる。



