『裏切り者』
『なんで玄武の総長といんの?』
『嘘つき』
怒られるかと思った。
だけど、怒られることもなく……。
「…これ、誰につけられた?」
聞こえてきたのは予想外な言葉。
私と空木の手首についている手錠に大きな手が触れた。
…声は少し低いけど、詩優が激怒した時の声ではない。
「久我くんがやりました~」
次に聞こえたのは空木の声。
空木は全く怖がっていないのか、いつも通りの声。
「鍵は?」
「久我くんが持ってまーす」
「そいつ今すぐ呼び出せ」
「ちょーっといろいろあって、このちっこい雷龍ちゃんを俺が玄武の倉庫に連れていかないと返してくれないみたい~」
「じゃあそいつ捕まえて鍵奪うまで」
そう言った詩優の声が聞こえて、すぐに耳に届いたのはスマホの呼出音。
…誰かに電話をしてる、のだろうか。
私はゆっくり目を開けて目の前にいる詩優を見た。
すると、すぐに彼と目が合って…。
私は目を逸らして下を向く。
…ずるい女だ。
自分から何も説明しないで、周りの人に甘えてばかり。



