私はゆっくり振り向いた。
すると、私服姿の彼が確かにそこにいた。
…見られた。
空木といるところを。手錠をつけられているところを。
裏切り者だ、って思われてる。
体が硬直して動かない。
まるで、石化したかのよう。
体は動かないけど心臓だけは嫌な音を立てて動いてる。
…怖い。
お願いだから何も言わないで。
何も見ないで。
今だけ、透明人間になりたい。
そう強く思っても透明人間になることは不可能で、ゆっくり彼がこちらに足を進めて近づいてくる。
違うの。
誤解だよ。
空木とはただの協力関係で。
説明したいのに、何も話せない。
何の言葉も出ないのは、全部言い訳にしか聞こえないって思ってしまうから。
やがて、彼は私と空木の目の前で立ち止まり。
彼の手が伸びてくるから、私は強く目を瞑った。



