「…もう、何もかもだめだよ……。空木さんに見られたから、学校中に噂されて……雷龍のみんなの耳に入れば詩優に伝わるのも時間の問題…」
ぽたりと涙がこぼれ落ちる。
空木はそんな私を見て、ポケットからハンカチを取り出すと何か小さな声で呟いて。
それを手渡してくれた。
手渡されたのはピンクの猫柄のハンカチ。
……明らかに女物だ。
…まさか、空木さんの?
そう思うと空木の厚意をありがたく受け取ることができなくて。
私はハンカチを返して自分の袖で涙を拭いた。
「乃愛は誰にも言いはしないと思うんだけどなぁ」
そう言った空木。
…いったい彼は何を根拠に言っているのだろう。私の知る空木さんは元気で、強くて、良くも悪くもすぐにいろんなことを誰かに話してしまいそうな人。
「…わかんないじゃん」
そう小さく呟くと、返ってきたのは意外な言葉。
「乃愛はトモダチひとりもいないし~」



