玄関のドアを開けると、なんとまだ、花莉はそこにいた。
「花莉!?お前まだそこにいんの!?いいから早く入ってこい」
花莉の背中を押して、脱衣所まで連れていくとすぐに扉を閉めた。
ほんとに風邪ひいたらどうすんだよ。あんなびしょ濡れで。
…榊が心配だったのかもしんねぇけど、自分が風邪ひくだろ。
馬鹿花莉。
心の中でそう呟いて、自分の部屋へと向かう。
タンスの中から大きめのタオル2枚とスウェットをとって榊のところへ。
玄関にいる榊にタオルを渡した。
「あ、ありがとう…夜瀬」
「……拭いたらあがれば」
「…本当に感謝してる」
俺は先にリビングに行って、テーブルの上に持ってきたもう1枚のタオルとスウェットを置いてインスタントコーヒーをいれる。
とびっきり苦くしてやろうか、砂糖入れすぎなくらい入れてやろうか、なんて考えたけどやめた。
コーヒーを入れた頃には榊が遠慮がちにリビングへと来て。
「座れば」
と言うと榊は「じゃあ…」と言って大人しく椅子に腰を下ろす。



