「…今食ってもいい?」
詩優は私を抱きしめながら聞いてくる。
「い、今!?」
「すこーしだけにする」
「…ひ、一口だけなら」
さすがに目の前で、全部食べられるのは私の心臓が持ちそうにないんだ。
そう答えたら、詩優はゆっくり私を離してくれて。私は詩優の隣へと座った。
隣では詩優が紙袋からラッピングした箱を取り出して、ゆっくりリボンを解く。
箱を開けると、ほんのりチョコの甘いいい匂いが漂う。
「好きな子から初めてチョコもらった」
彼はそう呟くように言う。ちらりと詩優を見ると嬉しそうな表情で。
胸の奥が熱くなる。
「…わ、私、も初めて本命チョコあげたの」
「大事に食う」
「…うんっ!」
それから箱の中に入れておいた小さい木のフォークを使って、ガトーショコラが一口、詩優の口の中へ。
美味しいかな、
甘すぎないかな、
気になってもぐもぐと口を動かす詩優をついつい見てしまう。