「詩優は罪な男だね~。ひめちゃんが好きならはっきり乃愛ちゃんに言えばいいのに」
倫也がらそう言ってにやけたまま詩優を見る。
…乃愛ちゃん、とは空木さん(姉)のこと。
いつの間にか下の名前で呼んでたんだ。
「そうよ、詩優。
花莉に空木姉と戦わせて鼻の下伸ばしてるだけじゃだめよ。花莉に何してくるかわからないし、何も知らない空木姉が族の争いに巻き込まれるかもしれないの。
早く何とかしてよね」
そう言って京子も詩優を見る。
…確かにそうだ。
空木さんが族の争いに巻き込まれてしまったら大変だ。
私も隣に座る詩優を見つめた。
「…わかってる。そんな顔はしてねぇけどな。
空木には最初にちゃんと断ったんだけど…それでも納得してもらえてねぇから、明日またちゃんと言う」
さらにぎゅっと強く繋いだ手を握る詩優。
最初って…告白されていたときだろうか。
抱きつかれてた時の…。
ちゃんと断っていたんだ。
それでも諦めてくれない空木さんはやっぱり強敵かもしれない。
「明日は土曜日で~す」
倫也がそう言うと、詩優は「じゃあ月曜」と言い直した。
月曜日、私もついて行こう。



