あの詩優が……0個?



「…なんで?」


「好きな女の子がいたからでしょ」



ドキッ、と胸が鳴る。

“好きな女の子”
というところに反応してしまったから……。




それって…私、だよね……?




私は…去年のバレンタインで誰にも渡していない。
いや、渡せなかった…と言った方が正解だろうか。




…去年、バレンタインが過ぎてしまっても……どんなに遅くなっても作り直して渡せば良かった。

そんな後悔をしてももう遅い。




「詩優、花莉のこと大好きだから、今年も他の子からは受け取らないと思う。

っていうかね、そんなにいろいろ悩まなくても大丈夫よ。花莉が気持ちを込めて作るものなら一番美味しいに決まってるから」




よしよし、と京子が私の頭を撫でてくれる。
さっきまで焦っていた心の中に少しずつ安心感が広がっていく。




「ありがとう、京子」


「可愛い花莉の相談ならいつでも聞くから言ってね」