「何作るか決めた?」



放課後の倉庫にて、みんなから離れたところでこっそりバレンタインチョコのレシピがのっている本を見ていたら、京子が覗き込んできた。



びっくりして、心臓が跳ね上がる。
慌てて隠そうとしてももう遅く……隠すのを諦めて



「えと……実はまだ決まってなくて……」



小声でそう返すと、



「詩優ならなんでも喜ぶと思うわよ」



優しく微笑んでくれた。
……確かに。詩優は優しいから、喜んでくれるかもしれない、けど……




「…ほかの女の子チョコを食べても私のチョコが一番美味しい、って思ってもらえるようなチョコを作りたいの。一番美味しくて、一番可愛いチョコ……」


「ねぇ、花莉」




「…なに?」


「去年のバレンタインの話を少し倫也に聞いたんだけどね、詩優は誰からのチョコも受け取ってないみたいよ」




「え?」


「つまり詩優が去年受け取ったチョコは0個」




首を傾げる私に教えてくれる京子。
それでも私は理解するのに時間がかかった。