詩優はそんな私の言葉に耳を傾けず、私の手を取るとぐいっと引っ張って。
「こっちのが近道」
細い路地裏へと進んで行く。
建物の間に挟まれている道は、2人で並んで通れるくらいの幅。空は晴れているのに、少しだけ薄暗さを感じる。
こういう道を1人では絶対通りたくないけど、詩優と歩くのはなんだか楽しい。新しい道を知ることができて、なんだかワクワクするんだ。
詩優はこういう近道をたくさん知ってたりするのかな…?
そう思いながら詩優に手を引かれながら歩いていたら…。
「やめてっ!!!!!!」
女の子の叫ぶような声が聞こえてきた。
続いて
「大人しくしろよクソガキ!!!」
と男性の荒々しい声が耳に届く。
その声はここからすぐ近くから聞こえてきて…。嫌な予感がする。
「花莉、俺から離れんなよ」
詩優にそう言われ、こくりと頷いた。



