雷龍の総長、副総長、幹部が全員揃っているというのに本当に命知らずな男だ。
「…“玄武(げんぶ)”、お前が総長なんだって?」
詩優がゆっくり声を出す。
一瞬、耳を疑った。
だって、今、詩優は確かに…、この目の前の痴漢男に『総長』って言ったから…。
この痴漢男が暴走族の、総長…なの!?
ドキリとしながら男の返答を待つと、
「そうそう。俺が“玄武”の総長、空木 怜央(うつぎ れお)。以後よろしくお願いしまーす」
そう言って、ポケットに手を突っ込んだままだるそうにぺこりと一礼。
すると、
「空木!」
痴漢男の背後から声をかける人物。
その人物は痴漢男とは対照的で、すごく優等生に見える。痴漢男は金髪で制服は着崩しているけど、その人は黒髪で制服を一切気崩していない。
ワイシャツのボタンも1番上まで止めてあって、ブレザーの前ボタンもしっかり止まっている。



