それなのに……
目の前の男は詩優にも恐怖を抱くことはなく、再び話し出す。
「え、まじで姫なの?もっとおっぱい大きい女いっぱい─────────」
最後まで言う前に
竜二さんが痴漢男の背後へと回り込み、首根っこを掴んで引きずっていく。
「なになに~?」
そう言いながら遠ざかっていく痴漢男。
引きずられている時の表情も一切変わることはなく…。
竜二さんは倉庫の外へと痴漢男を投げ捨てた。
そして、汚いものを触って汚れを落とすかのように手を払う。
それから最後に
「死にたくなければもう二度とここに来るな」
低い声でそう言い放ち、勢いよく倉庫の扉を閉めた。
痴漢男に見えるわけではないが、私は扉に向かってあっかんべーをする。
それと同時に
どこかで転んでしまえ!!!!
と強く願った。
もう二度と、あの痴漢男には会いたくない。



