今にでも殴ってしまうんじゃないかと思うくらい。
だけど、胸ぐらを掴まれている男は顔色一つ変えずに、気だるそうな目で明日葉を見ているだけ。
…何か、嫌な予感がする。
口を開いて、『もう帰ろう』と言おうとしたら
「雷龍の姫に頼んだほうが早いと思ったけど、貧乳の雷龍ちゃんでも別にいいや。めんどくさいし」
そう呟く男。
その呟きは、離れている私にも聞こえるくらい声。
『雷龍の姫に頼んだほうが早い』
引っかかる言葉。
どういう意味なのか、次の言葉を待っていたら再び男は口を開き。
「俺を雷龍のトップに会わせてほしいんだけど」
と言った。
ドクン、と心臓が嫌な音を立てる。
…もしかしたら、というかもしかしなくても……
この男は相当危険なんじゃないか。
ただの痴漢とかじゃなくて…
どこかの暴走族の人なのかも……



