「詩優」



彼女に言い聞かせるように自分の名前を口にした俺。
花莉はムッとした表情で



「冬樹くん」



またまた榊を呼ぶ。




「詩優」




だから俺もまたまた自分の名前を口にして、花莉に言わせようとした。





「冬樹くん」




だけどそう上手くはいかない。
榊を呼んでべーっと舌を出す花莉。だから俺も意地になってきて。




「詩優」


「冬樹くん」




「詩優」


「冬樹くん」




「……」




数回繰り返した後に花莉の頬から手を離して、布団を引っ張る。
彼女の顔が隠れるまで布団を被せたら自分のマスクをはずして、布団の上からキスを1回。




これだったらうつる心配もねぇだろ。




花莉の熱が下がったら榊のこと考える暇がなくなるまでキスしてやる。




「……しゆ…」




布団の中から聞こえてきた彼女の小さな声。
それは榊ではなく、今度は俺を呼ぶ声。









「……花莉?」



彼女の名前を呼んだ時、すー…すー…と可愛い寝息が聞こえてきた。



…寝るの早くね?
と思いつつもう1回布団の上からキスをして、立ち上がる。








「すぐ戻る」




そう言ってから部屋を出た。







詩優side.end