「…冬樹くんに会いたい……」
さらに俺にとどめを刺す彼女。
つーか急になんで……榊…?
以前花莉が熱を出した時、色んなことを言っていたことを思い出す。
あれが全部本音だったのかはわからないけど…。勢いで言ってしまったこともきっとあっただろう。
だとしたら“冬樹くんに会いたい”っていうのは……
花莉の本音か……?
「……」
「…冬樹くん……」
何度も呟く彼女のマスクの紐を引っ張ってはずす。
それでも彼女は俺の方を見てくれない。
その口を無理矢理にでも塞ぎたくなる。
俺以外の男の名を何度も呼ぶ、その口を。
「冬───」
「花莉」
もう一度榊を呼びそうになった彼女を止めた。
「俺より榊がいいの?」
そう聞くと、花莉はやっと俺の方を向いてくれる。
俺と目を合わせた花莉はなんでだかムッとした表情で…。



