その時───
ガラッ!と大きな音が聞こえて、それからすぐに
私のお腹あたりに回ってきた大きな手。
ぐいっと強い力で引き戻され、手すりをつかんでいた手が離れた。
引き戻された勢いで、どんっ!と何かにぶつかる音が聞こえたけど、私には少しも痛みはない。
私を包み込むのは、温かい
…体温?
「花莉!!無事か!?」
すぐ近くで聞こえてくるのは、大好きな人の声。
ゆっくり目を開けると……
私のうしろには詩優がいた。
2人ともベランダに座り込んでいて。
今、助けてくれたのは……詩優なんだとすぐにわかった。
心配そうに私を見つめる詩優にこくりと頷くと、すぐに安心した表情に変わる。
それからすぐにぎゅっと抱きしめられた。
後ろから、強く……。
「…馬鹿花莉」
そう弱々しく呟く声が耳に届く。
…私、今……詩優が引き戻してくれなかったら……今頃ベランダから落ちてた……
そう考えると怖くて、体が小刻みに震え出す。



