「ねえチーフ、本当に時間がヤバいんですけれど、課長から連絡とか入ってないですよね?」
「うん、知らない。本当に会社集合だった?現地で待ってたりしないよねえ?」
「そんなあ・・・」

スマホを出して、スケジュールの確認をする小熊くん。

「やっぱり会社から2人で向かう予定でした」
「じゃあ、電話してみなさいよ」

こうしていても始まらないじゃない。

「えーっ」
小熊くんが渋っている。

よっぽど高田は厳しいらしいわね。
まあ、この子にはそのくらいでちょうどいいのかも。

その時、
ブブブ。
小熊くんの携帯が鳴った。

「はい小熊です。ああ、課長。はい、・・・はい。え?」
驚いた声を上げ、私を見ている。

何?どうしたの?

「わかりました」
そう言うと、スーッと、私に携帯を差し出す。

「何?」
「課長が変って欲しいそうです」
「私に?」
「はい」
小熊くんは頷いて見せた。

「もしもし、鈴木です」
『悪いが小熊の外回りに同行してもらえるか?』
「はあ?私が?」
『ああ』

何か変だ。らしくない。

「理由は?」
『・・・体調が良くない』
「はあ?」

嘘でしょう。あの高田が体調不良を理由に仕事に穴を空けるなんて。

「どうしたのよ」
『大丈夫だ、心配するな』
「大丈夫なわけないでしょうがっ」
つい大きな声を上げた。

『うるさいなあ、静かにしろ』
不機嫌そうな声で言い、後は一方的に今日の段取りを説明し始める。

きっと、これ以上聞いても高田は話さないだろう。
私は諦めて、今日のスケジュールの修正を練った。