カランカラン。

バーのドアが開き、カウンターに座る背中が2つ並んで見えた。
1人は潤。見ただけですぐにわかる。
そしてもう1人は・・・。

「ああ、悠里」
潤が気づき右手を挙げた。

「こんばんわ」
2人の間まで行き挨拶をする。

この時の私は声が震えないように必死だった。

「久しぶりだな」

大学生だった頃の幼さは消え、凜々しくたくましくなった元彼はしれっと声をかける。
なんだかとても気まずい。
この気持ちは3人とも同じだろうけれど、いたたまれない気分。

「元気そうね」
にっこりと笑顔で言ってみた。

でも、これは嫌み。
8年も姿を消していた鷹文に、一言くらい言いたかった。

それに対して、
「ああ」
ちょっと投げやりな短い返事が返ってきた。

「俺、ちょっと電話してくるわ」
この場の空気を一番感じていたらしい潤が席を立つ。

「気を使わせたわね」
「ああ」
「8年ぶりね」
「ああ」
スッと、鷹文が視線を外す。

その瞬間、私はこみ上げるものを押さえられなかった。
8年間、ずっとあなたを探していたの。そう言いたいのに、涙声になりそうで言葉が出てこない。
そんな私の様子を見て

「ごめん。突然連絡を絶ってしまって、申し訳なかった」
鷹文が辛そうに頭を下げた。